オトナとコドモのよしなしごと





ちゅ、と肩口に口づける。
力強くて、引き締まっていて、その肌に触れるだけで、躯の芯が、じん、と熱くなる。
上掛けをそっと剥いで、逞しい上腕を唇で辿る。
tommyの石鹸の香りと、滑らかな肌。
更斗は、その感触に陶然となって、また、ちゅ、と吸いついた。
要爾とふたり、寝転んでもまだまだ広いベッド。
要爾がこの邸に越してきた時に、要爾のプライベートルームとして用意したこの部屋に運び込まれた。
そのサイズの特大さとか、要爾のベッドメイキングの巧みさに対して感想を持つことは何度もあったけれど、こうして要爾とふたり、絡まって寝ることになるとは、夢にも思わなかった。
ふ、と知らず淫蕩に微笑う。
要爾がどんなに烈しく動いても、ほとんど音を吸収してしまうマットレス。
昨夜のセックスを思い出して、更斗は自分の中心が反応しているのを知った。
少しだけ頬が熱くなった。
ふたりきりの生活を再開してから、毎晩のように要爾とセックスをしている。
ルカがアメリカに戻り、その存在が鮮烈であった分だけ、とても淋しくて、ずっと塞ぎ込んでいた。
けれど、夜毎、要爾の熱を感じることで、少しずつ、元気を取り戻した。
要爾は、色んな意味で、とても烈しい。
その完璧な肉体も、凄絶なテクニックも、甘く低い声も、すべてがヨすぎて、苛烈だ。
自分の経験値では、とても太刀打ちできない。
けれど、どんなに烈しく抱かれても、どんなに長い時間攻められても、ふたりで見る夢は甘美で、堪らない。
いつも、どんなときでも、要爾が欲しい。
更斗はどんどん唇を下げていき、とうとう、ソコに到達した。
いつも例外なく、更斗に壮絶な快楽をもたらしてくれるモノ。
見つめているだけで、更斗の頭はボウ・・・っとした。
今は力を失っているそれを、ぺろ、と舐めてみる。
tommyに雄の匂いが混じって、美味しい気がした。
また、ぺろ、と舐めてみる。
今度は、どく、と跳ね返してくるような反応があった。
更斗は、また淫蕩に微笑った。
上腕から辿ってきた皮膚と比べて、舌で感じる弾力が全然違う。
つるりとした先端と、複雑に入り組んだ筋が、舌に絡みつく。
更斗は自分でも気づかぬうちに、要爾にしゃぶりついていた。
徐々に質量を増してくるそれに煽られ、更斗はその行為に夢中になっていく。
その姿は、まるでお腹を空かせた仔猫がミルクを求める時に併せ持つような必死さと無垢さを滲ませていた。
ますます没頭して、根元まで呑み込んでみようと思ったその時、凄烈な力でそれを阻まれた。
顔を埋めていた腰から、要爾の顔が見える位置まで、急に上体を引き上げられた更斗は、要爾とばっちり目が合って、単純に驚いた。
まさか起きているとは・・・と、そこまで考えて、思い直した。
隆起した胸筋に、軽く組んだ両腕をつく。
「ごめん、起こしちゃった?」
無邪気な言い回しに、要爾は苦笑した。
更斗の耳たぶを長い指で愛撫し、甘く訊き返す。
「何をしていた」
「え、なにって」
言わせたいのかな、と一瞬思ったけれど、更斗は一歩進んだ答えを返していた。
「要爾さんがいつもシてくれるから、そんなにおいしいのかな、と思って」
要爾は軽く吹き出して、いよいよ面白そうに笑った。
要爾のそんな反応が不可思議で、更斗は愛らしい小鳥のように首をかしげた。
自分からはあまり奉仕したことがなかった。
唇をそこに寄せようとすると、江木も、もうひとり――かつてのセックスフレンドの男も、それを止めさせた。
技巧が稚拙すぎて、あまり気持ち良くないんだろうな、と単純に判断している。
ただ、ヘタでごめんね、と謝ると、自分を抱いてきた男達は、皆一様に同じような表情をするから、いつも不思議に思っていた。
要爾も似たような顔をしている。どこか楽しそうな。
更斗は無意識に自分の手の甲を、ぺろり、と舐めた。
その扇情的な仕草に、要爾が目を細める。
ニヤリ、という擬音が似合いそうな顔は、立ち消えていた。
「更斗は淫乱だな・・・」
そこに貶めるような響きはない。
要爾はゆっくりとした動作で、腹の上にある更斗の身体を抱き締めた。
「冷えてるじゃないか・・・」
「大丈夫だよ。要爾さんがいるから」
「私の体温を奪う気だな」
低い美声を更斗の耳に注ぎ、要爾は同じトーンで低く笑った。
更斗もつられて笑みを零す。
要爾はまれに、わざとオヤジ的な言い回しをして、更斗をからかう。
しかし、更斗はそれも愛しかった。
「ね、まだ舐めてもイイ?」
視線を合わせ、誘うような口ぶりで、オーラルセックスの続きを望んでみるが、要爾は愛撫を開始し、暗にその申し出を却下した。
今度は自分のターンとばかりに、更斗の喉の辺りに舌を這わせている。
「更斗の躯は、どこも美味いな・・・」
「あ、も、よう、じさん、」
更斗は手を突っ張らせて、逃れようとしたが、当然のように無駄な抵抗だった。
鎖骨を、つー・・・と舌で辿られて、力が抜けていく。
「あ、ぁぁ、」
「ああ、ここも美味い・・・こっちも喰べてみよう・・・」
もう一方の鎖骨は、舌でなぞられた後、甘噛みされた。
「もう、ようじさ、まいにち、食べてるくせに・・・ぁあ、やだ」
胸の尖りに、ちゅう、と吸いつかれ、その過度の刺激に、更斗は涙目で抗議した。
もうとっくに勃っていた中心を要爾の腰に押しつけて、自分の欲情を伝える。
「おれも、なめたい、ようじ、さん、おねがい」
「やだ、なんて言われると、尚更やりたくなるな」
要爾は薄く笑って更斗の願いを華麗にスルーし、乳首への愛撫に集中した。
円みに沿って、くるりと舐めあげ、小さな尖りを小刻みに擦ると、更斗は綺麗な声で啼いた。
「も、ようじ、さ」
上体を支えている腕に震えが走っている。
要爾は、自分の身体の上に乗っけていた更斗を、自分の下に素早く組み敷いた。
すかさず口づけを落とそうとすると、恨みがましい目つきで、更斗に睨まれた。
「おれ、なめたいって、言ったのに・・・」
薄っすらと涙を溜めて、不服を申し立てる更斗は、可愛すぎた。
嗜虐心がどこまでも煽られる。
いつものように髪を梳いて、よしよし、と宥めることもせず、今日の要爾はちょっとだけ意地悪く囁いた。
「更斗のせいだ。やだ、なんて言うから」
「ど、して」
何故そんな風に責められるのか、更斗には解からない。
だから、何だかやけに哀しくなって、ますます涙で瞳が潤む。
要爾がごくたまに意地悪をすると、いつもこんな展開になる。
雄を煽り切る手管を、自然に身に着けている更斗を見下ろして、要爾は心の中で苦笑した。
口淫を止めさせた理由も、実はこの辺りに起因するのだが、狡いオトナである要爾はそれを更斗に教える気はなかった。
売られてゆく仔牛のような哀しそうな瞳から、とうとう涙が零れ落ちる。
それを電光石火の素早さで吸い取り、要爾はいきなり深く口づけた。
更斗の唇をこじ開けて、極上の柔らかさを有する舌を探り出す。
はじめは頑なに抵抗して逃げ惑う更斗だが、すぐに陥落して、ためらいがちに舌を絡ませ、身体をすり寄せてくる。
その素直さが、ある意味、たまらない。
今夜も同じような流れで進むことを確信して、要爾は丁寧に口づけを施していく。
更斗の腰の辺りが、だんだんと揺らめいてきている。
要爾は、ふ、と目元だけで笑った。
俺の更斗は裏切らない。
夜明けは、まだもう少し先のようだった。

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